2015年、国連サミットによって持続可能な開発目標「SDGs」が採択され、世界中でSDGsの目標達成に向けて取り組む動きが求められるようになった。
環境問題への意識が高まっている昨今において、”アップサイクル”という取り組みが、ひときわ存在感を放っている。
アップサイクルとは、廃棄物や不用品に新たな付加価値を持たせることで、新しい製品にグレードアップさせる事を言う。
特に、ファッション業界においてアップサイクルへの取り組みが活発化しており、多くの企業がビジネスに取り入れるようになった。
これは、衣料品の生産に大量の水と化学製品を必要とし、相当量の温室効果ガスの排出を伴う事・世界全体で見ると、何百万トンもの繊維廃棄物が埋立または焼却処分されている事などが理由に挙げられる。
ポーランドにおけるアップサイクルへの取り組み
アップサイクルの活発化の傾向はポーランドでも見られており、ポーランド全国紙であるRzeczpospolitaは、2021年7月末で、ポーランド国内には14万4000件の中古品販売店があると報じている。
日本の環境省が発表した平成30年度の国内中古品小売業の事業所数が3万3千カ所であることを考えると、調査年度の違いはあれど、ポーランドでの中古品への取り扱いの意識の高さが如実に表れた数字であると言える。
中でも、ポーランド国内では古着売買の需要増加が目覚ましく、ヨーロッパ中で展開しているファッション通販サイト・Zalandoは、ポーランドが、最も早く「中古品」というカテゴリーを登場させた国の一つだとしている。
また、ポーランドの大手繊維リサイクル企業がランダムに抽出した1000人を対象に行ったアンケート調査によると、約80%の回答者が環境のために古着の買取・交換を行っていると回答し、57%が衣料品のリサイクルとは、素材から新しい価値を生み出す事であると回答した。
このように、既にポーランド国内では古着のリユースは広く浸透しており、人々の意識は購入した古着のリサイクル及びアップサイクルへと向けられているのだ。
ポーランド発:注目のアップサイクルメーカー
ポーランド国内で早くからアップサイクルに取り組み、ポーランド市場におけるアップサイクルのパイオニアと呼べるのがHO::LOだ。
HO::LOは、2006年から古着や企業の古い広告バナーなどのアップサイクルに取り組み、バッグやアクセサリーを生産している。
https://ho-lo.pl/ (公式ホームページ)
〈商品例〉
また、ポーランド南部の都市・クラクフに籍を置くTrashki upcyclingも、古い広告バナーや自転車のチューブ、その他廃棄物などを使ってバッグやアクセサリーを生産している。
https://trashki.pl/(公式ホームページ)
〈商品例〉
どちらも古着や廃棄物から作られたとは思えないほどの出来栄えと洗練されたデザインに、アップサイクルの可能性の高さを感じさせられる。
ポーランドのブランドZODZYSQは、全てアップサイクリングによって作られたアクセサリー・衣服を販売している。
https://www.zodzysq.pl/ (公式ホームページ)
〈商品例〉
さらに、ポーランド国内のファッション通販サイトでは、”Upcycling”カテゴリーを設けるサイトが増えている。
https://www.pakamera.pl/upcycling-0-t6856.htm
https://www.haart.pl/dom/upcycling/
https://svrtylab.com/kategoria/kolekcja-upcycling
サステナブルへの変革が強く求められているファッション業界。
通販サイトの”Upcycling”カテゴリーの導入は、スタンダードとなっていくのか注視していきたいところだ。
まとめ
日本の消費者庁が令和3年7月に行ったサステナブルファッション消費者調査では、日本の10代~60代までの男女2000人のうち、「古着への抵抗感がややある・強くある」と回答した人の割合が5割にも及んだ。
ポーランド国内の古着の浸透率から比べると、かなり高い割合と言えるだろう。
幅広い年代で古着への抵抗感が低いポーランドは、サステナブルファッションの土壌が整っており、リユース及びアップサイクルの取り組みが活発化しているのも、自然の流れと言える。
これは、他の中古品市場においても同様であり、ポーランドにおけるアップサイクルへの取り組みは、今後ますます拡大化してゆくだろう。
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参考資料
https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2020/10/f3bca316-20201028_tff_jp.pdf
https://www.env.go.jp/recycle/H30_reuse_research_report_1.pdf