ポーランドにおける環境意識及び環境配慮製品市場に関する調査

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 ポーランドでは近年、環境への意識が高まりつつあり、地球環境に配慮した取り組みが企業や個人を中心に広がりつつもある。本調査では、ポーランド人の環境保全に対する意識及び実際に行われている取り組みから、ポーランドにおける環境関連製品市場の可能性を探る。

ポーランド人の環境意識


 Eurostatが発表した最新のデータ(2017年)によると、ポーランドは1人あたりの都市ごみ発生量がEU内で2番目に少ない。同データによると、ポーランドにおける1人あたりの廃棄物量は315 kgで、EU平均の486 kgを大幅に下回っている。1人あたり781kgの廃棄物を排出しているデンマークと比較すると、半分未満の数字だ。

※単位:kg
※参考:Eurostat (online date code env_wasmun)

 しかしリサイクル率を見てみると、全廃棄物のうちリサイクルされたものは34%にすぎず、EU平均の46%を大いに下回っている。そこでポーランド政府は新しいプログラムを掲げ、自治体が達成するリサイクル目標を以下のように設定している。

≪各自治体が達成すべきリサイクル目標≫
2021年:25%
2022年:30%
2023年:35%
2024年:45%
2025年:55%(EUの目標数値)

※EUでは、各国が2025年までに都市ごみの55%、2030年までに60%、2035年までに65%をリサイクルすることを義務付けている。

企業による環境への取り組み

 企業による環境への取り組みポーランドにおいて、環境への負担を減らそうという取り組みを推進しているのは政府だけではない。スーパーマーケットチェーン等の大手企業は、プラスチック製品の使用を削減するため近年様々な取り組みを行っている。2019年9月からは、ポーランド国内の食料品店における全てのビニール製買い物袋が有料化され(野菜やパンを購入する際の薄手のビニール袋を除く)、買い物袋をもらうには0.25ズウォティ(約7円)の料金がかかるようになった。

 スーパーマーケットチェーン大手のKaufland(ドイツ系)は、2025年までに自社ブランドのパッケージを100%リサイクル可能なものにすると宣言。また、同じくポーランドにてスーパーマーケットを広く展開するLidl(ドイツ系)のポーランド支社も、すべてのプラスチックパックを2025年までにリサイクル可能なものにすると宣言し、自社ブランド製品のパッケージについては、プラスチック消費を20%削減するとしている。
 また同社は、プラスチック製のパッケージやラベルを削減するため、レーザー技術を用いて農産物に直接製品情報を入れ込む新しいラベリング方法を導入した。レーザーを使用することによる商品の構造や栄養価への影響はないとしている。以上の取り組みが功を奏し、同社は2019年、プラスチック消費量を800トン以上削減することに成功したと発表した。

 同じくスーパーマーケットチェーンのCarrefour(フランス系)は、ポーランドの店舗において、果物や野菜を購入する際に使用する薄手のビニール袋に代わる再利用可能なコットンバッグを導入した。現在ポーランド全土で5.99ズウォティ(約160円)で発売されている。同社は2025年までに全ての自社ブランドのパッケージを堆肥化またはリサイクル可能なものにすることを目標としているほか、様々な商品を量り売りで購入できるオプションを導入している。
 ポーランド最大のスーパーマーケットチェーンであるBiedronkaも、プラスチックの使用量を減らす取り組みに成功している。2018年度のビニール袋購入率は前年に比べ約40%減少し、2019年にはさらに6%減少している。

 レストランチェーンの間でも同様の取り組みが広がっている。2020年1月23日以降、ポーランド国内のマクドナルドは全店舗で、紙ストローをはじめとする紙製の容器を導入している。

 スーパーマーケットやレストランだけでなく、ポーランド屈指の観光地であるワルシャワ王宮も廃棄物を削減する取り組みを行い注目を集めている。古い広告バナーを再利用してつくられる買い物袋やバックパックは、SNSでも話題を集めた。広告バナーに使用されるポリエステルメッシュは耐久性、防水性に優れており、比較的軽いことから、鞄として再利用することに適しているという。

 これらの事例に代表されるように、政府や企業による環境への取り組みは一段と広がりを見せており、今後もますます活発化していくと予想できる。

EU法による規制

 ポーランド企業において、環境保全への取り組みや脱プラスチックの意識がこれほどまでに高いのはなぜだろうか。考えられる最大の要因としては、持続可能な開発目標(SDGs)関連の活動を一層強化しているEUの規制が挙げられる。
 EU法では、サステイナビリティ(CSR)報告や非財務情報の開示を大企業に求めており、報告をしなかった場合はその理由を開示・説明するよう求められる。したがって、EU加盟国の大企業の多くがSDGsに関連する様々な取り組みを行い、企業責任報告書内で同取り組みに関する報告を行っている。
 脱プラスチックに対する意識も、EUによる規制の影響を受けているとみられる。EU理事会は2019年5月21日、「使い捨てプラスチック容器の流通を2021年までに禁止する法案」を採択した。EU加盟国は、同法案発効から2年以内をめどに対応した国内法を整備することが求められている。

≪EUで流通禁止となる使い捨て容器≫
・プラスチック製カトラリー(ナイフ・フォーク・スプーン・箸等)
・プラスチック皿
・プラスチックストロー
・プラスチックマドラー
・発泡スチロール製食品容器
・発泡ポリスチレン製飲料容器
・オキソ分解性プラスチック製品

 こうした規制を受け、プラスチックや発泡スチロール製の使い捨て容器を使用しているスーパーマーケットや飲食店においては、速やかな対応が求められている。

オーガニック食品への関心の高まり


 脱プラスチックへ向けた取り組みと同様、環境に配慮した行動として現在ポーランドで注目が高まっているのが、オーガニック食品の生産及び購入である。

 ワルシャワ生命科学大学の調査(2017年)によると、「環境に配慮した食品(オーガニック食品)を意識して購入したことがない」という人の割合が2011年時点では半数近かったのに対し、2017年には10%にまで減少していることが分かる。また、少なくとも週に一度または月に一度買う人の割合が大幅に増加していることから、年々ポーランド人の環境意識が高まっていることが読み取れる。

※単位:%
※出所:ワルシャワ生命科学大学による調査「Rynek produktów ekologicznych」より

 ポーランドのオーガニック食品市場は、過去7年間で市場価値が3倍になるなど、近年急速な成長を続けている。2018年には市場価値が総額10億PLN(約2億4500万ユーロ)を超える規模となったほか、2025年には7億5,000万ユーロを超える可能性があるとも推測されている。

 一方で、ポーランドでオーガニック食品を購入する際の主な障壁となっているのがその価格帯である。IMAS International社の調査によると、回答者の64%が価格帯が高いことが購入の障壁となっていると回答したという。

大手スーパーマーケットチェーン2社(BiedronkaおよびKaufland)の公式サイト上には、環境に配慮した食品を紹介する専用サイトもある


 

今後の見通し

 ポーランドでは近年環境への関心が急速に高まりつつある。近隣諸国及びEUに後押しされ、環境に配慮した活動や取り組みが企業を中心に広がりつつあり、今後もこの動きはますます盛んになるとみられる。
 企業だけでなく、自ら環境への負担が少ない製品や食材を意識して選択する「グリーン・コンシューマー」も増加している。ポーランドの隣国ドイツでは、グリーン・コンシューマーの割合が人口の60%以上を占めるともいわれている。ポーランドでも近隣EU諸国の影響を受け、環境意識の高い消費者が増加すれば、リサイクル・リユース可能な製品やオーガニック製品をはじめとする環境配慮製品市場は拡大してゆくであろう。

参考:
https://ec.europa.eu/eurostat/data/database
https://www.thefirstnews.com/article/no-free-plastic-bags-in-poland-from-sept-1-7248
https://notesfrompoland.com/2020/08/21/poland-introduces-higher-fines-for-littering-but-simplifies-rules-for-waste-segregation/
https://notesfrompoland.com/2020/01/29/supermarket-giants-in-poland-replace-plastic-bags-with-cotton-bags-to-reduce-waste/
https://www.thefirstnews.com/article/poland-eu-leader-in-reducing-waste-7370
https://notesfrompoland.com/2020/01/22/warsaws-royal-castle-transforms-old-advertising-banners-into-bags/
https://ec.europa.eu/environment/ecoap/sites/ecoap_stayconnected/files/poland_eco-innovation_2015.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2019/ddba09c2ec3c478a/euSdgs201903.pdf
https://www.cdr.gov.pl/images/Radom/2019/19-11/Rynek_produktww_ekologicznych.pdf
https://foodfakty.pl/rynek-produktow-bio-rozwija-sie-coraz-szybciej

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