本調査レポートの目次
1. ポーランドのビーガン市場規模
2. 課題と論争
3.今後の見通し
レポートの一部内容
ポーランドでは、ベジタリアンやビーガンといった「菜食主義」が数年前から急激に広がりを見せている。
菜食主義には様々な種類があるが、一般的に肉・魚介を口にしない「ベジタリアン」と、一切の動物性食品を口にしない「ビーガン」とに分けられる。
〇市場規模
Ariadna社の調査によると、現在ポーランドでは成人人口の8.4%にあたる約320万人が菜食主義であると推計されている。また、菜食主義でない人のうち38.5%が「肉類の消費を制限するために努力をしている」と回答した。2000年時点で ポーランド成人人口のうち菜食主義者は約1%、2017年は3.2%であった(CBOS社調べ)。菜食主義者がここ2~3年で倍増していることが分かる。
ベジ・ビーガン食品を取り扱う店の数も増加傾向にある。Happy Cowが2019年に行った調査で、ワルシャワがビーガンに優しい都市世界6位に選ばれた。ワルシャワ中心部半径5マイル以内に50のビーガンレストランがあるという(5年前はわずか11店舗)。同社によると、ポーランド国内のベジ・ビーガン店数は1,214店舗にのぼる(2020年9月現在)。これらの店舗は地方にも多く点在しており、菜食主義が地方にも広く浸透しつつあることが分かる。
〇今後の見通し
ポーランドでは健康志向に加え、動物や環境への意識が高まっている。このことから、菜食主義の市場規模はますます拡大していくと予想できる。
日本には、かつてから植物由来の調味料や食品が多く存在する。調味料として幅広く活用できる味噌・醤油に加え、代替肉として注目されている大豆ミートや高野豆腐など、日本で日常的に食べられている既存の商品が、ベジ・ビーガン食品としてポーランドの菜食主義市場で売り上げを拡大できる可能性は十分にあるといえる。
ポーランドにおけるベジタリアン・ビーガン市場調査
2020年10月
ポーランドでは、若者や女性を中心にベジタリアンやビーガンといった「菜食主義」が数年前から急激に広がりを見せている。菜食主義には様々な種類があるが、一般的に肉類・魚介類を口にしないのが「ベジタリアン」である。ベジタリアンの中にも様々な種類があり、一切の動物性食品を口にしない完全菜食主義「ビーガン」や、植物性食品と乳製品を口にする「ラクト・ベジタリアン」、植物性食品と乳製品、卵を口にする「ラクト・オボ・ベジタリアン」、植物性食品と魚、卵、乳製品を口にする「ペスコ・ベジタリアン」など、多くのカテゴリーが存在する。
市場規模
市場調査会社 Ariadnaの調査によると、現在ポーランドでは成人人口の8.4%にあたる約320万人が菜食主義者(菜食主義6.6%、完全菜食主義1.8%)であると推計されている。また、菜食主義ではない人のうち38.5%は「肉類の消費を制限するために努力をした」と回答し、60%は「来年または2年以内に肉の消費を減らしたい」と回答している。
世論調査機関CBOS社によると、2000年におけるポーランド成人人口のうち菜食主義者は約1%、2017年には3.2%であった。これと比較すると、菜食主義がここ2~3年で倍増していることが分かる。
2019年に行われたRzeczpospolita社の調査からも、肉の消費を制限しているポーランド人が増えていることが見て取れる。同調査によれば、18〜65歳のポーランド人のうち45%が「肉の消費を厳しく制限している」という。肉製品の消費を完全に禁止しているわけではなくとも、肉の消費量を減らす努力をする人が増えていることが分かる。
ベジタリアン・ビーガン食品を取り扱う食材店やレストランの数も着実に増加傾向にある。
Happy Cowが2019年に行った調査において、ポーランドの首都ワルシャワが世界で6番目にビーガンに優しい都市に選ばれた。ワルシャワ市内中心部の半径5マイル以内に50のビーガンレストランがあるという。5年前に同調査が行われた際にはわずか11店舗しかなかったことから、ここ数年で急成長を遂げていることが分かる。同社が提供しているベジタリアン・ビーガン食材店及びレストラン検索サイトによると、ポーランド国内のベジタリアン・ビーガン食材店及びレストラン数は1,214店舗にものぼる(2020年9月現在)。これらの店舗が都市部のみに集中しているのではなく、地方にも多く点在していることから、ポーランドにおいて菜食主義が広く浸透しつつあることが分かる。
↑スーパーマーケットで売られている、ベジタリアン向けのクリームスープ
↑スーパーにはベジ・ビーガン食品専用のコーナーが設けられている
課題と論争
菜食主義をめぐって、ポーランドでは文化論争も起こっている。カトリック教徒を多く抱
えるポーランドにおいて、保守派の中には「菜食主義はカトリック信仰を含む伝統的な生活様式を脅かす」と考える人もいる。2019年にはグダンスクにおいて、3つのビーガンレストランが店を攻撃・破壊される事件も起こっている。
また、ポーランドにおいては若者や女性の菜食主義者が多く、家庭内でもしばしば論争になることがあるという。ポーランドの伝統的な食事スタイルを重視している家庭においては、菜食主義になることを両親や祖父母に言い出せなかったり、強く反対されたりするケースもあるという。宗教や伝統との調和は、人口の約9割がカトリック教徒であるポーランドにおいて課題の一つとなっている。
今後の見通し
近年、ポーランドにおいて菜食主義は一段と広がりを見せている。健康志向に加え、動物や環境への意識が高まっていることを考えると、菜食主義者はますます増加し、その市場規模は今後も拡大していくと予想できる。
日本にはかつてから、大豆等を使用した植物由来の調味料や食品が多く存在する。調味料として幅広く活用できる味噌・醤油に加え、代替肉として注目を集めている大豆ミートや高野豆腐など、日本で日常的に食べられている既存の商品が、ベジタリアン・ビーガン食品として海外での売上を拡大できる可能性は十分あると言える。日本においては、ベジタリアン・ビーガンの基準を満たしていても、パッケージにそのような表記がなかったり、そもそも菜食主義者をターゲットとしていない商品も多く存在する。近年目覚ましく拡張しているポーランドの菜食主義市場は、日本からの食品輸出拡大の観点から考えると、十分に可能性があると言える。