2023年8月、ポーランド政府は付加価値税(VAT)とその他税制に関わる法律草案を可決した。
今回の制度改革は、ポーランドで個人事業主を含むすべての会社を営む経営者に関わる大きな変更となる見通しだ。
最大の変更点は、2024年7月1日に施行されるインボイスフォーマットの制度改革である。
同日からすべての納税者はKSeF(National E-Invoicing System)と呼ばれる財務省管轄下のシステム上でのe-インヴォイスの発行が義務付けられる。
すべてのB2B取引におけるインヴォイスのやりとりが同システム上で行われることとなり、インヴォイスの発行、送付、保管がすべて一つのポータル上で完結することとなる。
主な目的は、税制不正や税金の未納を防ぐことである。
本制度の開始によって、納税者へのインセンティブとしては、税金還付に関わる時間が短縮される点が挙げられる(現在最大60日→制度開始後最大40日へ)。
2024年7月1日からは付加価値税(VAT)納付者にも同システム利用が義務化され、付加価値税免除業者に関しても、2025年1月1日から同システム上での取引が必須となる予定だ。
一度システム上で作成されたインヴォイスの削除や編集は認められないとされており、修正インヴォイスの発行をすることが求められる。また取引先へのインヴォイス(請求書、領収書)送付は同システムを通してされることが義務化される一方で、送付システムにはe-インヴォイス(XMLファイル)以外を添付できないことから、いかなる付随書類に関しては現状の方法(メール等)でのやりとりをする必要がある。
上記の改正義務を遵守しなかった場合の罰則は2025年1月1日から適応される見込みとなっており、罰金は最大記載税金の満額に及ぶ可能性があるとされている。
〈編集後記〉
日本でのインヴォイス制度の開始が話題となっていますが、ポーランドでのビジネス経営者にとっても小さくない変化が待ち受けています。
e-Invoice制度の導入により日々の税務作業が短略化されるとの見方もある一方でインヴォイスの送付が従来通りのメールや個別システム経由でできなくなることや、制度が不透明であることに対し、筆者の周囲では不安の声も周りで上がっています。
予定通り来年7月から制度が施行される場合、年明けから社内の総務システムの大幅な変更を強いられる企業も少なくありません。
〈参照〉