新型コロナウイルスの影響で、ポーランドにおけるオフィス市場は、約2年間不透明な時期が続きました。
感染症対策が整ったことで、この混乱は落ち着くと考えられていましたが、ウクライナ侵攻によってさらに不透明な時期が続くことになりました。
今回は、ポーランドの首都ワルシャワのオフィス市場の現状を日本と比較してご紹介します。
低下するオフィスの供給面積と需要面積
ワルシャワにおいて、オフィスの供給は減少しています。2023年は60,000sqm(平方メートル)のオフィスの新規供給が計画されていますが、この面積は前年の4分の1にあたります。
そして2024年は、2023年より少なくなり、40,000sqm程度の供給面積になると予定されています。
このように、新たなオフィス建設は予定されていますが、過去の供給面積と比べて減少傾向となっています。その一方で、ワルシャワという便利な立地を活用した、改修工事や再建築などは増加しています。
供給と比較すると、オフィスの需要は増加しています。コロナ禍の2年間は、穏やかな需要の伸びが見られましたが、2022年は前年の33%の、860,000sqmの需要がありました。
この需要は、コロナ前の2019年の水準とほぼ同等です。
オフィスの需要の中でも再契約の割合は、5%低下し、40%になりました。下記のグラフは、オフィス市場の新規供給面積、需要面積、吸収面積、空室率を示したものです。
※吸収面積(吸収需要):(期初空室面積+新規供給面積ー期末空室面積)を計算することで、空室部分にテナントが入居した面積の合計を算出し、需要面積の増加分を推計するもの。(東洋不動産株式会社
出典:ShareSpace Summary of Warsaw Office Market
参考として、東京のオフィス市場も新型コロナウイルスの影響で需要が低下しています。
以下のグラフは、東京のオフィス市場における新規供給面積と空室率を表したものです。
出典:三井住友銀行
ワルシャワでオフィスを特に必要としている業界は、サービス業、IT業界、金融業界であり、これらの業界の割合は、全体の中で52%を占めています。
そして、ワルシャワのオフィス空室率は、2015年から2019年が最も低く、平均4.5%の空室率を記録していました。
日本では、オフィス需要は景気が回復した後も、リモートワークが積極的に導入されるため、コロナ前のような需要は見込めないと予想されます。
同じく、ポーランドもリモートワークが積極的に導入され、その環境を整えるための新労働法も適用されました。
本格的な適用が進められる中、ワルシャワのオフィス市場はこれからも変化していくと考えられ、注目に値します。
出典
ShareSpace Summary of Warsaw Office Market
Warsaw Office Market – Q4 2022
編集後記
ポーランドでは、オフィス市場が新型コロナウイルスとウクライナ侵攻の大きな影響を受けています。特にワルシャワには、首都ということもありポーランド国内にあるオフィスの半分が集中しているため、オフィス市場の動向も目まぐるしいです。
また、リモートワークの規定を含めた新労働法の施行により、オフィスが必要になる場面が少なくなると予想されています。
このような背景から、ポーランドの不動産業者には、オフィス空間を供給するだけでなく、それぞれの会社のニーズに合わせた空間を柔軟に供給することが求められています。