ウクライナ物流業界の現状

ウクライナ侵攻

物流はインフラの重要な一部であり、どんな状況でも止まることはありません。しかし、ウクライナではロシアの軍事侵攻により、物流業界が大きく変化しました。

特に保管・輸送プロセスが変化しており、西部地域を除くウクライナ全土で、受け入れた貨物を保管することなくそのまま出荷する、クロスデッキング方式への切り替えが行われたのです。

中には、倉庫や貯蔵庫を売却、放棄した企業もあります。

Interfax Ukraineによるインタビューにて、Watermelon Development の代表取締役であるフェディール・アルブゾフ氏は、「このようなモデルを採用することで、倉庫維持費用、人件費、機材費などの諸経費を最小化できる」と述べています。

ウクライナ侵攻と物流業界

ウクライナの物流企業が保有する倉庫の総面積は260万平方メートルで、そのうち158万平方メートルがキーウ地域に属しています。

ロシアの軍事攻撃により、キーウ地域だけでも、45万平方メートル以上分の倉庫設備が破壊されました。破壊された倉庫設備のうち、8万平方メートル分については再建・修繕され、今も稼働し続けています。

2割ほどの倉庫機能が失われたにも関わらず、キーウは今もウクライナの物流機能の中枢を担っています。

物流業界の変化と課題

ロシアの軍事侵攻が本格化した2022年2月24日以降、ウクライナ西部が物流の拠点になりました。ウクライナ東部、中央部に位置する多くの企業が西部地域に移転したためです。

例えば、リヴィウ地方の物流関連施設が占める面積は、2023年には8万平方メートルにまで増加しました。

アルブゾフ氏は、「この地域にはまだ倉庫スペースが不足しています。しかし、リヴィウのデベロッパーは、物流設備への投資を続けており、拡大傾向にあります」と答え、

「今のところ、Dragon Capital、Alterra Group、Sparrow Capitalの3社が最も積極的に投資をしており、2023年には約30万平方メートルの様々な物流用不動産を確保できるでしょう」と述べました。

戦争終焉後、ウクライナの中で真っ先に復活が見込まれるのは倉庫物流業界でしょう。

多くのデベロッパーが、戦争により多くのプロジェクト延期に追い込まれた中、戦争が終われば、6ヶ月から9ヶ月もの比較的短期間で、建設中のプロジェクトが完成すると想定されています。

戦争開始に伴い、物資の輸送経路も変化しました。現在は米国やアジアからの航空輸送が無くなり、陸路経由でポーランドやドイツから仕入れが行われるようになりました。

今年に入り、新たな物流手段として、ヨーロッパ内の港からウクライナまでの陸上輸送が加わりました。その結果、輸送日数は14日間延びるとともに、作業工程の追加や国境通過規制により、輸送コストも増加してしまいました。

戦争は、物流の川下過程にも課題を突きつけています。ミサイル攻撃などの敵対行為が繰り返されており、日々の配達業務を脅かしています。

そのような困難な状況にも関わらず、ウクライナ国内、及び国外宛の配達が求められる中で、業界全体として進化の歩みを続けようとしています。

例えば、ウクライナ人の国外避難により、Nova Post、Meestといった物流業界の主要プレーヤーは多くの課題を抱えています。

未来に向けての歩み

2022年3月以降、ウクライナから欧州・北米へのMeest社の出荷量は、毎月30%の成長率で順調に伸びています。

最も多い仕向地はポーランド、ドイツ、チェコです。

ウクライナへの配送需要も多く、現在ニーズの高いものとしては、戦争用装備品や、ウクライナで一時的に生産が停止したブランドの衣料品、ビタミン剤、医薬品などです。
こうした製品は、ヨーロッパ各地から、myMeestのサービスを通して発注されています。

2022年、Nova Post グループは国に対し71億フリブニャ(約118億円)の税金、手数料を支払いました。同社は毎日ウクライナ各地に小包を配達しており、ロシアの実効支配から解放された地域に真っ先に戻る企業でもあります。

Nova Postは戦争中にも関わらず毎日働き、260万トンの貨物を含む3億1500万個の小包を届けました。Nova Post Globalは2022年に560万個の国際小包を配達し、個人による海外配送数は9倍になりました。

ポーランド、及びドイツへの配送が最も多いですが、これらの国には400万人以上のウクライナ人が滞在しているためです。

さらに、Nova Postはウクライナの経済発展のために投資を続けており、2022年に1,000件の支店を開設しました。その大半はキーウ、リヴィウ、オデッサ、ヴィニツィア地方に開設されています。

厳しい状況にも関わらず、戦争の最前線に位置するイジュム、スタリイサルティヴ、ハリコフ、スヴィアトヒルスク、ライマンといった都市でも、新しい支店が開設されました。

現在、Nova Postはウクライナで約9,300支店と14,000件の郵便局を運営しており、国内では最大、かつ最も利便性の高い配送ネットワークです。

ヨーロッパ諸国でも、ポーランド、リトアニア、ドイツで新しい支店が開設されていることは、特筆すべきことです。

現在、DHLやTMMなどの国際郵便・物流会社もウクライナでの業務を再開しました。2023年内には、FedEx TNTが営業を開始する予定です。

出典

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