ポーランドで広告税導入案-民間メディアは激しく抗議

政治
”選択の余地のないメディア”と書かれたGazeta Wyborczaのニュースサイト(2月10日、https://wyborcza.pl/)

新型ウイルスの影響による財政の圧迫を緩和するため、ポーランド政府は、民間のメディアに対し広告税を導入する計画であることを発表した。これに対し10日(水)、多数の民間メディアが報道等を24時間停止するなどして、政府に反発を示した。

広告税とは

導入が計画されている広告税は、公共メディアを除くテレビ、ラジオ、新聞、インターネットメディア会社等の広告収入に追加課税される予定となっている税金だ。税率は2%から15%までの間で、広告や宣伝対象商品の種類、広告収入等によって異なる。導入の可否については未だ議論中だが、保守派の与党『法と正義』は、法案の可決に必要な過半数の票を所持している。可決されれば、法案は2021年7月に発効される予定だ。

税収の使い道は

ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は9日(火)、広告税は新型ウイルスの流行により打撃を受けた医療・文化部門への公的資金を調達する「連帯税」であるとし、同税収により年間8億PLN(約2億1700万ドル)を調達出来ると発表した。うち50%が公衆衛生基金に、35%が「メディア分野の文化及び国の遺産」を支援する基金に、15%が記念碑を保護するための基金への支援に充てられるという。

民間メディアは激しく反発

民間メディアは次々と抗議行動を起こした。10日、TVNやPolsatのチャンネルには、真っ黒な画面と共に「あなたの好きな番組が今ここで流れているはずでした」「独立したメディアなしで、世界がどのように見えるのかを経験してください」などというメッセージが24時間にわたり表示された。新聞社のGazeta Wyborczaも、広告税導入案を「無料メディアへの強力な打撃」と批判し、自社のニュースサイトに黒い画面を表示して反発を示した。ラジオ局のRadio Zetは、「独立したメディアなしに、選択の自由なしに、自由な国はない」と政府を非難するメッセージを放送した。 

民間メディア各社は、広告税による減収は年間2億7000万ドルにのぼるとし、パンデミックの影響で収入減に苦しむ多くの企業が破綻するだろうと警鐘を鳴らしている。一方で、政府を支持する公共メディアは、政府から潤沢な資金提供を受けており、収入が倍増しているとの報道もある。

一般市民からも、「報道の自由の弱体化を招く」と激しい非難の声が上がっている。10日夜、公共放送のテレビ局・TVPビルの前には約200人の抗議者が集まり、民間メディアの抗​​議を支持した。

海外からも非難の声が

在ワルシャワ米国大使館は10日、ツイッターで「無料メディアは民主主義の要である。米国は常にメディアの独立を擁護するだろう」と非難の声をあげた。欧州委員会は、メディアの多様性と独立性への支持を強調したうえで、「ポーランド政府が反対派の報道機関を抑圧するための行動を起こした」と非難し、メディアの自由に対する懸念を表明した。

参考:
https://apnews.com/article/media-newspapers-poland-6066a00487af9a7b2add617d51836e71
https://www.theguardian.com/world/2021/feb/10/polish-media-hold-blackout-in-protest-at-tax-threat
https://www.bbc.com/news/world-europe-56007942
https://www.dw.com/en/poland-media-goes-offline-for-24-hours-to-protest-ad-tax/a-56524758
https://oko.press/media-in-poland-protest-against-the-planned-advertising-tax-this-means-bankruptcy-for-many-media-and-limits-to-pluralism/

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