投資家がポーランドを選ぶ5つの理由

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近年、世界で最も経済的に安定し、最も急成長を遂げている国の1つとしてポーランドが注目されている。
ポーランドは、2019年のグリーンフィールド投資額ランキングで、中東欧地域で1位に、欧州全体で3位にランクインしたほか、 2020年末に発表された「外国投資に適した場所」ランキングでは欧州内で3位という結果を記録している。
また、新型コロナウイルスの影響があったにも関わらず、2020年の海外ポートフォリオ投資の総額は100億ユーロに達した。今回は、ポーランド投資貿易庁が作成した資料をもとに、投資先として今注目を集めているポーランドの5つの魅力を紹介する。

その1. 経済の安定性

① 経済危機耐性
1989年以降、ポーランドが不況に陥ったのはわずか一度で、2008年の金融危機の間にもGDP成長率は堅調に推移していた。新型コロナウイルスの影響を受けた2020年の第一四半期も、GDPは前年比で2%増加した。欧州委員会は、「2020年のポーランドの経済後退率は4.6%程度にとどまり、EU諸国の中で最小になるだろう」と推測している。

② マクロ経済の確実性
国際通貨基金(IMF)によると、1981年以降、ポーランドの一人当たりのGDPは9倍以上増加しており、今後さらに大きく成長する可能性があるという。

  ポーランドの購買力平価GDPの推移(出典:WWW.CEICDATA.COM)
    1981年:4,700ドル
    2018年:32,000ドル
    2020年:35,700ドル
    2024年(予測):42,900ドル

③ビジネスに適した環境
ビジネス環境に関するランキングで、近隣諸国より上位にランクイン。昨年のポーランドの対内直接投資額は、中東欧地域内で1位、欧州全体では7位だった。

DOING BUSINESS 2020(ビジネス環境ランキング2020):40位
GLOBAL COMPETITIVENESS REPORT 2019(国際競争⼒指標 2019):37位
CORRUPTION PERCEPTION INDEX 2019(腐敗認識指数 2019):41位
European Countries with The Most Foreign Direct Investments
(欧州内で海外直接投資が多い国ランキング):7位
Greenfield Inbestments in Europe in 2019(2019年欧州グリーンフィールド投資額):3位

④ ポーランド経済特区
企業に対する税制上の優遇措置はポーランド全土で利用可能で、失業率の高い地域、地域経済の競争力の高い地域、及びイノベーションを生み出す可能性が高い地域で実施されるプロジェクトに対しては政府からの報奨が与えられる。国内全体が経済特区になったことにより、国内のどこに投資しても、法人所得税免除の可能性がある。

⑤ 研究開発税の減免
企業は、賃金や給与、設備、科学研究用の材料の購入などに関連する費用について、課税標準から最大200%(研究開発センターでは250%)の控除を受けることができる。

⑥ 充実した政府の支援
ポーランド政府は現在、国内の起業家支援に力を入れている。
企業が行う戦略的・革新的な製造プロジェクトに対して、コストの最大20%を政府がサポートするというプログラムもある。また、新型コロナウイルスの感染拡大時には、パンデミックの影響を受けた企業を支援する1000億PLN(約220億ユーロ相当)規模の「危機対策パッケージ」を発表した。

⑦ 再投資
昨年の投資環境レポート内では、外国人投資家の94%がポーランドへの再投資に前向きであると報告されている。国内市場の規模経済の安定性がポーランドの最大の強みと考えられている。外国企業による再投資の規模は、2013年の35億ユーロから2018年には89億ユーロへと倍増した。

その2・欧州の中心に位置し、東西を結ぶ

① 欧州の中心に位置するポーランド
ポーランドは欧州の中心に位置し、アジアと欧州を結ぶ役割を果たしている。
ポーランド経済研究所によると、パンデミックによる事業・オフィス再配置により、ポーランドはEU加盟国の中でも最大となる、年間83億ドル規模の利益を得る可能性があるという。

② 交易路の”クロスロード”
ポーランドでは、4つの主要貿易回廊が交差している。また、高速道路の総延長は欧州内で5位、鉄道網の長さはEU内で4位だ。
インフラ整備の拡大に力を入れており、2014年から2025年にかけての道路建設への支出は、計1,680億PLN(約370億ユーロ)にのぼるという。

③ 鉄道の繋がり
3つの主要な回廊(バルト海アドリア海航路・北バルト海物流回廊・琥珀貨物回廊11号)がポーランドを通っている。
ポーランドは新シルクロード計画の中心的な役割を果たしている国の一つであり、陸路では中国を中央アジア及びヨーロッパと、海路では東アジアを中東及びアフリカと結んでいる。

④ ヨーロッパの物流拠点「グダンスク」
国際輸送の中心地ともいえるグダンスク港は、ヨーロッパで最も急成長している港の1つである。2008年からの10年間で、貨物取扱量は3倍に増加した。Euro Central Portという新しいプロジェクトにより、将来的に9つの多目的ターミナルが開発される予定で、2045年までには年間1億トンもの貨物を扱える規模になる予定だという。

⑤ 空輸の幅広い可用性
2019年、ポーランド国内の空港の総利用者数は約4900万人で、中東欧地域内で最多となった。

その3・人的資本

①優秀な人材
25歳から64歳までのポーランド国民のうち、92%が中等教育を修了している。OECD諸国の平均である78%を大きく上回っており、同地域内では最高水準だ。
ポーランドの大学では約130万人の学生が学んでおり、学生数では欧州4位。ポーランドの高等教育制度が際立っている理由の1つとして、STEM教育(科学・技術・工学・数学)を専攻する学生が多いことが挙げられる。

② 豊富な英語話者
2019年のEF英語能力指数(非英語圏の国の英語力を計測する指数)で、ポーランドは100カ国中11位にランクインしている。

③ キャッシュレス大国
ポーランドは、「キャッシュレスが進んでいる国」ランキングで、欧州内で2位にランクインしている。

その4・革新性

① 中東欧地域のリーダー的存在
中東欧地域の人口の約四分の一を占めるポーランドは、欧州で6番目の経済規模を誇る。
1996年から2017年までの間、欧州のビッグファイブ諸国の一人当たりGDPは27%の増加であったのに対し、ポーランドを含む中東欧諸国では114%もの増加を記録した。

② 優秀なプログラマーが豊富
ポーランドは中東欧地域内で最も多くのプログラマーを抱えている。
2016年のHackerRank(優秀なプログラマーを抱える国別ランキング)にて、ポーランドは総合3位を獲得。その3年後にはSkillValueのランキングでもトップ5入りを果たした。

    主な中東欧諸国のプログラマー数(推定)
    ルーマニア :139,000人
      チェコ:130,000人
      ハンガリー:105,000人
     ポーランド:401,000人

③ スタートアップ企業が育つ場所
2019年、ポーランドのスタートアップ企業で働く人の数は43,000人~47,000人程で、過去5年間で倍増している。スタートアップ企業の約4割が世界規模の企業と提携しているという。

④ AIへの高い関心
ポーランドでは、200社以上の企業が人工知能に投資しており、うち40社以上がAI、ビッグデータ、IT製品関連の研究開発センターである。また、国内の約260社が人工知能をベースにしたソリューションを構築しているなど、AIイノベーションへの関心が非常に高い。ポーランドの大学においても、2013年から2018年までの間に約6,000人の研究者がAIに関する出版物を計12,000編ほど発表している。

⑤ 世界的大企業から寄せられる信頼
2020年にはマイクロソフト社が「ナショナルクラウド」プロジェクトに参加し、ワルシャワでのデータセンター設立に10億ドルを投資することを発表した。同年、グーグル社もワルシャワでのデータセンター建設に20億ドルを割り当てると発表している。

⑥ 未来都市「ワルシャワ」
ポーランドの首都ワルシャワは「2020/21欧州の未来都市」ランキングで6位にランクイン。グーグルやマイクロソフト、サムスン等の世界的大企業がオフィスを構えているほか、世界に7つあるグーグルキャンパスのうち1つはワルシャワにある。

その5・幅広い業界における、豊富な専門知識

① ビジネスサービス部門
ポーランドのビジネスサービス部門における雇用者数は急速に増加しており、2008年の50,000人から2020年には338,000人にまで増加。また、同部門からの輸出額(2019年)は198億ドルにのぼった。

② 自動車部門
2018年、ポーランドは商用車生産台数ランキングにおいて欧州内で6位を記録。国内にはフォルクスワーゲン、FCA、ダイムラー、トヨタといった大手自動車メーカーの生産工場が存在する。

③ ゲーム部門
2020年6月時点でワルシャワ証券取引所に上場しているポーランドのゲーム会社の総資本は、500億PLN (約110億ユーロ)を超える規模にまで成長している。

④ 航空部門
ポーランドには140社以上の航空関連会社があり、総従事者数は12万人を超える。2018年の同部門総売上高は約19億3000万ユーロにのぼった。
また、世界最大規模の航空機エンジンメーカー5社が生産工場をポーランドに設置している。

⑤ 再生可能エネルギー部門
2013年から2019年にかけて、約480億PLN(約106億ユーロ)がポーランドの低排出エネルギー投資に割り当てられた。また、太陽光発電の設置容量は1年間で176%増加しており、欧州内で第5位の増加率を記録した。

参考:
https://www.paih.gov.pl/why_poland

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