ウクライナ有数の温泉リゾート・スロヴィアンスク

Slipne湖 ウクライナ侵攻

スロヴィアンスクは、ウクライナ東部に位置する閑静で魅力的な街です。

塩湖がある街として有名な同地は、2014年にロシア・ウクライナ間の戦争が始まった場所として世界中に知られることとなりました。

基本情報

17世紀にロシアの君主アレクセイ・ロマノフによって設立された街、スロヴィアンスク。
以前はトールもしくはトール要塞と呼ばれており、その名はカゼニ川、シキ川から得られる水資源を侵略者から防御するため建てられた要塞に由来しています。
1784年になってスロヴィアンスクと名付けられました。

人口は2021年時点では11万人ほどでしたが、
ロシアの全面侵攻が開始された後は、5万人に減少したとされています。

主要産業

スロヴィアンスクの主要産業は、塩業、重工業、電機子・高圧碍子・セラミックス製造で、
周辺地域の中でも主要な産業都市です。

重機械製造業を中心に、工業に従事する企業が約34社あります。
その中でも代表的な企業としては、下記の3社が挙げられます。

Slovvazhmash社:コークス・金属産業向けの重機械を製造

Koksokhimmash社:ソーダプラント、セラミックプラントを有する

★Budmash社:塩を製造

観光名所

スロヴィアンスクは、その美しい塩湖から名前を取って、別名でドネツク・ソルトレーク・シティとも呼ばれています。
3つの塩湖があり、それぞれ Rapne、Slipne、Veysove と呼ばれています。

スロヴィアンスキ・リゾートはウクライナでも歴史のある泥温泉で、数百年前から人気があります。
温浴効果、温泉成分、気候といった条件が整っていることから、治療やリハビリテーションに用いられています。
湖水には塩化ナトリウム、硫酸塩などのミネラルが含まれており、特にRapneならびにSlipneの湖底からは良質な硫化系の泥が得られます。

スロヴィアンスクは、晴れが多い良好な天気に恵まれ、風がほとんど吹きません。
また、湿度が低く空気中のイオン成分が豊富です。
こうした気候条件が、代謝促進、免疫力強化、身体機能の向上などの健康促進効果をもたらします。

消化器系、神経系、循環器系の治療にも用いられるほどの健康効果を有するスロヴィアンスクの塩湖ですが、2014年のロシア軍侵攻によって大きな影響を受けてしまいました。

戦争の影響と市民生活

2014年4月12日、迷彩柄の服、バラクラバに身を包んだ兵士たちがスロヴィアンスクの警察施設に押し入り、施設を占拠したことを皮切りに、ウクライナ東部での戦争が始まりました。

ロシア連邦保安局に所属する武装勢力が、イーゴリ・ギルキンの指揮の元、地元警察局、及び安全保障局を占拠したのです。

その翌日、ウクライナは軍隊を投入し、対テロリスト作戦を開始しました。
ロシア兵がスロヴィアンスクから撤退するまでの3ヶ月もの間、ウクライナ勢力は戦い続けました。

3か月の戦闘ののちにテロリストらを市街から追い出すことに成功したウクライナ軍。
事態が収束し、スロヴィアンスクの住民はもう二度と戦火を経験することはないと思ったはずです。

ところが2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻が開始されました。

全面戦争となる中、スロヴィアンスクはロシア軍の進撃を二回受けました。
一度目は2022年夏、シヴェルスキ川を挟み、市街地から7km離れた地点までロシア軍が到達しました。二度目は2023年春に、ロシア軍がソレダルを占拠した後、バクムトとスロヴィアンスクを結ぶ幹線道路 “M03” に沿って進軍した際のことです。

現状、スロヴィアンスクから20km離れた場所が戦線となっています。
現地当局によれば、スロヴィアンスクの街には4万5000人もの一般市民が残っており、日夜問わず一日数回は警報が鳴り響く状況とのことです。

戦線が日々近づきつつあり、ほぼ毎日爆撃を受けている状況です。
2023年4月13日の大規模攻撃では、ロシア軍が S-300ミサイルを8発放ち、高層建物5棟、民家5棟、クラブ、店舗、車3台が破損しました。
この攻撃を受け、15人が死亡、24人が負傷しました。

2023年4月18日の夜、ロシア軍はS-300ミサイル、自爆型ドローンを用いてスロヴィアンスクを攻撃しました。
高層建物7棟、民家5棟、娯楽施設、ビジネスセンター、車数台が破損しました。

ロシア軍からの砲撃が絶えない中でも、スロヴィアンスクでは滞りなく生活が営まれています。
公共交通機関は運行を続けており、公共サービスも継続しています。
医療サービスの提供も続いています。

小売店や薬局などの営業店舗数は減少したものの、食料も棚に並んでおり、品物不足に陥ることはありません。
郵便局も営業し、年金の支払いも続いています。

しかし、市議会は市民に対し、家族及び自身の命を守るためにも避難を呼びかけているのが現状です。
今後も厳しい状況は続くと予想されます。

出典

  1. http://www.slavrada.gov.ua/?view=news
  2. https://www.facebook.com/pavlokyrylenko.donoda/posts/775633227452567
  3. https://karachun.com.ua/ru/sloviansk

ウクライナ出身のASAGAOスタッフ。本業は英語教師でありながら、現在はクラクフに住みながら当社にて避難民支援やウクライナ関連リサーチに従事。

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