機能面においてさほど違いはありませんが、学校運営システムについては違いがあるように思います。西南学院大学では、シラバス作成・教材準備・講義において、学んだことを学生が将来活かせるようになっているか、という点に留意するように言われています。教員はあくまで本業は教育者であることを求められ、自身の研究などは付随的な仕事であるとみなされているのです。私は、この視点は重要であり、納得できると感じています。我々はあくまで教育者であり、教えることこそが最優先の仕事であるからです。教育重視の考え方は、大学の広報マーケティング戦略や経営全般にも影響を及ぼしていると思います。日本では大学の授業料は有料(註:ポーランドでは公立大学の授業料は原則無料)ですので、夢や希望を持って入学してくる学生に対し、我々はその期待をある程度叶えなければならないのです。将来大学生になる世代の生徒たちにも、私たちの学部を進学先に選んでもらえるように、教育プログラムを提供しなければいけません。ですので、大学教員である我々は、高校生向けに講義やワークショップを継続的に行っています。最近私も、西南高校の生徒に「『知らない世界』から『身近な世界』へ:外国語学習の旅」という題で講義を行いました。この講義では、ただ単に外国語学習を生徒に勧めるだけでなく、外国語学習がいかに社会人になってから活きるかということについても紹介しました。
このような仕事は、私の能力や専門知識の幅を広げてくれる、モチベーティングな業務であると感じています。
学生の立場を考えると、言語をそのものを教えるだけでなく、21世紀の社会で仕事を見つけられるような教育を施す必要があるのです。彼らが社会に出て、貢献していけるように成長する手助けをしたいと、教員一同考えています。
ポーランドではこのような視点は忘れられてしまっていますね。もちろん大学が学生の就職支援に力を入れているからと言って、100%就職できることを保証している訳ではないのが現実ですが、このような視点は重要です。
さらに、日本やアメリカ、イギリスなどで運用されているモジュール制も私は大変評価しています。学生が自分でどのような能力を身に着けたいか考え、授業を選ばなければいけないからです。モジュール制は学生に、選択の可能性を与え大人の決断を求めるのです。これによって、文学専攻でありながら経済系の授業にも出席することができるようになり、このことは主専攻の勉強には全く支障をきたさないと思います。複数の異なる学問分野にまたがった研究(英語でinterdisciplinary)を行うことは大変重要であり、人文科学の学部専門知識の枠を超えた、様々な科目を学生に提供したいと考えています。
もう一つ、私が所属する学部の理念、「Unlock your potential 解き放て、ジブン!」についても触れておきたいと思います。学生個人の持つニーズと潜在能力に、我々教員は着目しています。授業は講義形式ですし、カリキュラムの自由度にも限界があります。それでも、学生それぞれが異なる得意不徳や能力を持っていて、各学生が自分に合った学問分野を見つけられるように導くことが教員の役割である、ということを念頭に置きながら教壇に立たなければいけません。つまり私の仕事は、学生をそれぞれに合った学びに導くことなのです。日本語の「指導教員」や英語の「Supervisor」といった単語は、とてもいい表現ですね。やはり、我々教員は学生のための存在なのです。