ウッチ県は、ポーランドの中心に位置し、ポーランドの各都市・各国へのアクセスの中心地となっています。ウッチ県の県都ウッチは、産業革命時、繊維産業で大きな産業力を誇り、「ポーランドのマンチェスター」と言われるほどでした。
基本情報
繊維産業で劇的な成長を遂げたウッチ
産業革命は、蒸気機関の発明によって、それまでの生産の効率化を促し、人々の生活を大きく変えました。
ウッチも産業革命で、大きく成長した都市の一つです。当時は、約600箇所の工場が建設・運営されていました。
20世紀末以降は、繊維産業は衰退してしまいましたが、現在でも実際に稼働していた工場建屋は当時のまま残され、ホテルやオフィス、イベントスペースなど様々な用途で利用されています。
現存する工場の跡地として有名な建築物が、マヌファクトゥーラです。ここには、レストランやショッピングストアと共に、当時の様子について学ぶことができるミュージアムも併設されています。
ミュージアムには、オーディオツアーやガイドもあるので、工場がどのように稼働していたか、また工場の歴史などを学ぶことができます。
ダイキン ウッチに工場を建設
空調機・化学製品メーカーのダイキンは、ウッチ県のクサベルフ工業団地に新工場を設立しました。2024年の稼働を予定しており、この建設には3億ユーロ(約375億円)が投資されています。
この工場では、ヒートポンプ式暖房機の製造が行われる予定です。同社は、温室効果ガス排出量ゼロを目指す欧州グリーンニューディル政策による、化石燃料を使用しない暖房器具の需要拡大を見込んでいます。
去年は、300万台のヒートポンプ式暖房機がヨーロッパに設置されており、2025年までに350万台の導入を同社は目指しています。
ウッチは、ポーランド中央に位置することから国内・国外へのアクセスが良く、同社はヨーロッパ各地への拡大をウッチの地から目指しています。
下記のグラフは、ポーランド国内でのヒートポンプ式暖房機の販売台数を示しています。
グラフからは、2021年から2022年にかけて、販売台数が劇的に伸びていることが分かります。同社は2024年の建設完了後、ウッチの工場に3000人の従業員を2030年までに雇用する予定です。
出典
PAIH Łódzkie Voivodeship
DAIKIN
「ポーランドにヒートポンプ式暖房機の生産工場を設立」
Notes from Poland
Japan’s Daikin to build €300 million heat pump factory in Poland
編集後記
ウッチはかつて産業都市であり、繊維産業が衰退した後も、工場が別の形となって現在も利用されています。
そのような中、日本を代表する空調機メーカーがウッチへ工場建設を進めることで、新たな産業がウッチで始まることになりました。情勢に合わせた産業の変化が、ウッチに新たな産業を生み出していることは、注目に値します。