コロナ禍におけるパンデミックの影響で、世界的に自宅などから仕事をするリモートワークが一般的になりました。
そして、昨年末から今年にかけて、ポーランドでは、リモートワークについて新たな法案が労働法に追加されました。今回は、ポーランドのリモートワーク事情についてご紹介します。
労働法改正の動き
ポーランドでは2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自宅から仕事を行う人が倍増しました。
下記のグラフは、ポーランドにおける2010年から2020年の在宅勤務者の推移を示しています。
リモートワーカーの急増を受けて、2022年12月、政府上院・下院で労働法改正案に関する協議が行われました。
これまで約3年間、パンデミックに対応したリモートワークの制度が一時的に導入されていましたが、2023年1月27日、アンジェイ・ドゥダ大統領が改正案に署名し、テレワークについての条文が労働法に新たに加えられました。
原則として改正案の条項は、Journal of Lawでの法律公布日の14日後から施行されます。
一方で、修正された法案のもとでのリモートワークは、公布日から2か月後の2023年4月7日から施行されます。
改正後の労働法~具体的に何が変わるのか~
改正労働法では、雇用者はすべての社員がテレワークを実施することを拒否できないとしています。
この改正によって、特に子育て中の親や障がい者の介護をしながら働く人々、妊娠中の女性がより働きやすくなることが見込まれます。
一方、リモートワークを行う従業員には、適切な環境の下でリモートワークをすることが義務付けられます。
雇用者は必要な備品あるいは費用を負担する必要があり、リモートワークをするにあたってかかる費用の負担も求められます。
例えば、セキュリティ対策ソフトや自宅光熱費の一部が、雇用者の負担対象となります。
通常時には会社に出勤をしている従業員も、年間24日を越えない範囲であれば、
出勤を必要としない業務においては、状況に応じてリモートワークを行うことができます。
新しいワークスタイルを導入するにあたって、経費算出を含む、雇用者と労働組合の間の合意で定められたリモートワークの原則を明記することが、雇用者の重要な義務とされています。
労働組合がない場合は、従業員の代表と協議の上、リモートワークを実施するためのルールを決定します。
従業員への飲酒チェック
今回の労働法改正でとりわけ興味深いのは、従業員の飲酒を規制するための規定が導入された点です。
この規制の目的は、従業員やその関係者の健康や財産を保護するためで、規制の導入には、労働協約や労働基準法、雇用主からの通知の下で導入されることが必要です。
基本的に従業員は飲酒チェックが求められますが、雇用主はアルコールと同様の作用を持つドラッグの検査も、追加で従業員に求めることができます。
新労働法では、呼気中1dm³内に0.1〜0.25㎎含まれると、規制の対象になります。
検査の頻度や時間は、会社内のルールに基き、雇用主は少なくとも2週間前に、
テストを行うことを従業員に通知することが求められます。
もし、このテストでアルコールが検出されなければ従業員の勤務が認められ、
検査結果は残されません。
一方で、アルコールが検出された場合は、その従業員の勤務が許可されず、雇用主がその検査結果を、個人情報として保存することが認められています。
出典
KPMG
Legal Alert: Regulations on remote working and employee sobriety checks
Notes from Poland
Poland enshrines remote working rights-and workplace sobriety tests – in law
Osborne Clarke
“Poland introduces rules on remote working and sobriety testing”
Ministry of Family and Social Policy
“Control of employee’s sobriety”
編集後記
日本でもリモートワークが普及しており、企業情報でもリモートワークを推進している状況をアピールする企業が多く見受けられます。
働き方が変化しているだけでなく、企業選び(就職活動や転職活動)のポイントの一つに、リモートワークの有無やそのための環境が加えられていることがよくわかります。
一方で、ポーランドの新法案は、リモートワーク環境を国で支援する動きが見られ、もはや企業にとってリモートワークが付加価値でなくなっています。
雇用者と被雇用者双方がワークライフバランスを保ちながら、円滑に業務を進める制度は今後働きやすさをより向上させる要素となるのか、注目する必要があります。