ポーランド、ビトムで活躍する日本人バレエダンサーたち

インタビュー

今回は、ポーランド・ビトムにあるシレジア州立歌劇場で活躍する日本人バレエダンサー、石原響子さん、牛坂久良々さん、酒井啓丞さんにインタビューさせていただきました。毎月三人で決まった金額を出し合い、買い物をして、全員で食事を作り食卓につく仲の良さはインタビュー中もすぐに感じ取ることができ、とても楽しいインタビューとなりました。
(インタビュアー:ASAGAO sp. z o. o.インターン 冨島 沙織)

-バレエをはじめたきっかけはなんですか?

(牛坂)私は両親の勧めで、5歳のときから地元仙台のバレエスクールに通い始めました。
(冨島) ご両親の勧めで!最初は抵抗とかはなかったのですか?
(牛坂) 最初に見学に行った時から楽しそう!と思いました。
(冨島) 石原さんはいかがですか?
(石原)私は覚えていないのですが、3歳のときに見ていた石原さとみさんのドラマをみてやりたい!と言ったらしいです。母が体験に連れて行ってくれました。
(冨島)ドラマから!様々な始まり方があるのですね。酒井さんはいかがですか?
(酒井)僕は母がバレエの先生なので、半強制的に連れていかれて、最初は無理やりご褒美目当てに踊っていました(笑)
(冨島) お母さまが先生だったということは大変なこともあったと思います。ちなみに、ご褒美は何をもらっていたのですか?
(酒井)そうですね、対立することはありました。ご褒美でよく覚えているものは大きなシャボン玉が作れるおもちゃですかね。

-所属するシレジア州立歌劇場の魅力を教えてください。

(牛坂)劇場が大きくて、昔ながらのヨーロッパのTHEオペラと言った建物で、内装もきれいなところです。
(冨島)ぜひ見てみたいです。初めてその舞台を見た時の感情はいかがでしたか?
(牛坂)そうですね、初めてのときは舞台側から客席を見たので(笑)
(冨島) なるほど!ダンサーさんだとそのようなことがあるのですね。
(酒井)ダンサー目線になってしまうのですが、リハーサルのスタジオがとても大きくて練習のしがいがあります。
(冨島)確かに、ダンサーさんにとっては大きいほうが心の余裕もありそうですね。

-練習で疲れた際に行くようなビトムのおすすめの場所はありますか?

(石原)大きな森のような公園があって、開放的です。そこを歩くと気分転換になります。
(酒井)ショッピングモールにボーリング場があるかなあ。あとはおいしいレストランがあります。ポテトパンケーキ好きですね。
(冨島)ポテトパンケーキ私も食べました!量が多くておいしいですよね。

-みなさんの一日のスケジュールをお聞かせいただけますか?

(牛坂)朝の10時から1時間トレーニングがあります。そのあと休憩をはさんでリハーサルを午後2時までします。そのあと一旦家に帰ってまた夜の6時から10時までリハーサルをします。
(冨島)リハーサルに毎日多くの時間を費やしていらっしゃるのですね。昼と夜の休憩時間は何をされているのか気になります。
(酒井)リハーサルで疲れているときは寝ています。あとは好きなものを食べて好きなことをします。特に何かアクティブなことはしないかもですね(笑)

-牛坂さんへ、高校時代に地元の仙台で出会ったクラクフの友だちの話を聞かせてください。

(牛坂)クラクフから来た彼女は私の友人の家にホームステイをしていて、一緒に授業を受けていました。クラクフの歌劇団からオーディションを受けてみませんか?と言われたときに彼女に連絡したら、お父さんと一緒に空港まで迎えに来てくれて、面倒を全部見てくれて…
(冨島) それはあたたかいですね。しかもオーディションというとても緊張するときに支えてくれる存在は心強かったと思います。

-海外のバレエ団で働くにあたっての、大変な経験があれば教えてください

(牛坂)ポーランドで働くこと自体がはじめてだったので、最初はとても苦労しました。バレエのディレクターが英語を話せないロシア人の方だったので、言葉の壁がありました。でも皆さん優しく教えてくださいました。しかしこのままでは嫌だなと思い、二年目の一年間ポーランド語の学校に通いました。ようやく団員のみんなと話せるようになって、その時は嬉しかったです。
(酒井)僕も言葉の壁はありました。監督やディレクターにすぐに思ったことを伝えられないもどかしさはありました。でも英語が話せれば、回りくどくなってしまうこともありますが意思は伝えられるので、全く英語が通じない環境よりはいいなと思います。
(石原)私も来て三か月でようやく落ち着いてきたなという感覚を持ちました。だから二年目に、日本への里帰りからポーランドに戻ったときは、一年目とは異なる余裕を感じられたと思います。

-今後の目標をお聞かせいただけますか?

(牛坂)バレエダンサーのお仕事は少し特殊で、ずっと同じ劇場にいてもいいのですが、新しいことに挑戦したいと思ったら劇団を移ることもあるんです。踊り続けられる限りは新しいことに挑戦したいなと思っています。
(石原)私は今ここで出来ることを積み重ねて、しっかり土台を作りながら、次のステップの準備をしています。
(冨島) 今のリハーサルだけでも大変とお聞きしたので、それに加えて将来の準備というのは並大抵の努力ではないと思います。
(石原)今が踏ん張り時だと思って頑張っています。
(酒井)僕は男性ダンサーで女性を持ち上げることが多いので、もっと女性を持ち上げる様々な演技ができるよう筋トレをしています(笑)。

-日本でバレエをする子どもたち、留学を考えている学生など 夢を持っていても踏みだせない人々へエールをお願いします。

(牛坂)私たちもこれまで海外に出ていった先輩たちを追いかけてきました。私たちもそのような存在になれるのかは分からないですが、今の時代は自分が行きたい道を先に進んでいる人を見つけることは難しくないと思います。思いを持ち続けることが大切だと思います。
(石原)特にダンサーは踊れる期間が限られているので、今しかできないことをやりたい!と思ったら挑戦するのは大切だと思います。
(酒井)僕は中二から本気でバレエを初めたので、大会に出てもなかなか賞が取れませんでした。海外で踊るなんて夢のまた夢だったのです。でも努力して諦めなかったのでここまで来れたのだと思います。

日本を飛び出し、海外でのバレエ団で活躍する三名の原動力は、諦めず挑戦する気持ち、困難に直面しても乗り切る工夫、そして追いかけてきた歴代の先輩たちの姿でした。
この記事を読んでくださっている皆様も、三名の言葉から何かに挑戦する手がかり、きっかけを見つけていただけたら幸いです。ポーランドで輝く若いバレエダンサーたちを、今後も応援していきましょう。

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