「ポーランド産キャビア」と聞いても、ピンと来ない方も多いだろう。
しかしポーランドは、世界でも有数のキャビア生産国である。
2023年現在、急成長を遂げたある1社の養殖会社の力で、
ポーランドは世界第二位のキャビア生産国に躍り出たのだ。
ロシアとイランが主要な産地だったが…
従来、キャビア生産は、
主にカスピ海に面するロシアとイランによって独占されていた。
しかし現在、キャビアのほとんどは養殖されたチョウザメの卵であるため、
多くの場所で養殖が可能となった。
2018年時点でのキャビアの最大の生産国は、年間100トンを生産する中国であり、
次に続くのが60トンのロシアであった。
Antonius Caviar社
ポーランド最大のキャビア生産者は、Antonius Caviar社である。
同社は2019年時点で世界のキャビア市場400トンのうち、5%の生産量を占めていた。
そこから急成長を遂げ、
2023年現在ではヨーロッパ1位、世界で2位のキャビア生産者に成長した。
中でも、一つの養殖場が生産するキャビア量としては、世界1位の生産量を誇っている。
(総生産量1位の中国企業は、多くの養殖場と提携しチョウザメの卵を買い付け、
キャビアに加工している)
Antonius Caviar社はポーランドの中央、
Konin(コニン)のGosławice(ゴスウァヴィツェ)を拠点としている。
澄んだ川に3つの養殖場を構え、なるべく自然に近い環境でチョウザメを育てている。
2023年現在、主に生産がおこなわれているのは、
オシェトラのロシアチョウザメ、シベリアチョウザメの二種類である。
さらに、年間80㎏ほどのベステルキャビアも生産されている。
ミシュランシェフがうなる味わい
国際見本市にて、Antonius Caviar社の生産するキャビアに多くのシェフが感銘を受けるという。
2023年3月には、アジア最大規模の食品関係見本市、FOODEX JAPANに出展。
日本の料理人、輸入業者から非常に高い評価を受けた。
おいしさの秘密は、
新鮮さ、必要最小限に抑えた塩分使用量、そして自然に育った原材料の3点である。
新鮮さ
Antonius Caviar社の最高級ラインキャビアの消費期限は、パッケージングから105日。
これは通常の缶詰フレッシュキャビアが1年程度の消費期限であるのに対して、
非常に短い設定である。
また、同社はパスチャライズは一切行っていない。
キャビア本来の味わいが損なわれてしまうことを避けるためだという。
必要最小限に抑えた塩分使用量
一般的に流通しているキャビアの塩分量は、3.0%-3.5%である。
それに対して、Antonius Caviar社が生産するキャビアの塩分量は、2.6%-2.7%である。
キャビアの品質を保つために最低限必要な塩分量が、2.5%であることを考えると、
同社のキャビアは必要最低限の塩分量に抑えられていることが分かる。
自然に育った原材料
Antonius Caviar社では、チョウザメを自然に生育している。
多くのチョウザメ養殖場では、年中暖かい水温をキープし、えさを常時食べさせることでチョウザメの生育を早める手法がとられている。
一方Antonius Caviar社では、水温を温めることはせず、小さく痩せたチョウザメを、
自然なテンポで育てている。
そのため、シベリアチョウザメは生育まで8年、オシェトラのロシアアチョウザメは10年を費やしている。
このように時間をかけることで、
キャビアの原料となる最高品質のチョウザメの卵が採取できるのである。
日本の一流にこそ味わってもらいたい
現在、同社が生産した商品は、西ヨーロッパ、アラブ首長国連邦、アメリカに輸出されている。
一方、ポーランド市場での流通はごく一部であり、
高級ポーランド料理店で提供されているという。
FOODEX JAPAN出展に際して来日したAntonius Caviar社セールスマネージャーは、
日本での同社の可能性について、次のように語った。
「日本は世界中の料理の一流シェフが集まる、大変食文化が洗練された国だと思う。
一流の食通も多いと聞いている。
そのような国の皆さんにこそ、我々が自信をもって生産した、
最高品質のキャビアを召し上がってほしい。」