ウクライナの繊維産業とその特徴

ウクライナの軽工業業界で最も発展している産業は、衣料品・繊維類です。同産業には2,500社以上が参入しており、約25万人以上を雇用しています。

生産高の40%以上が国外へ輸出され、主にEU諸国（ドイツ、デンマーク、ポーランド等）向けです。なかでも繊維産業は、軽産業全体の売上高のうち48%を占め、一大産業ということができます。

綿

ウクライナに限らず、世界の繊維産業の中心は綿製造ですが、現在衰退している産業であるとも言えます。それでもウクライナにおいて綿業は現在、繊維産業の中で一番の規模を誇っています。

綿花は、合成繊維や人工繊維にならぶ、糸の原料の一つです。

織物、及び綿製品の生産工場は以下の通りです。

羊毛(ウール）

羊毛工業は、綿業の次に重要な産業だといえるでしょう。ウクライナで生産される全テキスタイルの7.0％を占めており、原材料となるウールから、糸、生地、ウール製品が製造されています。

羊毛工業は常に厳しい競争にさらされてきました。化学繊維や合成繊維、綿が付加素材として使われてきたためです。

ウクライナの羊毛工業は、30社近くの企業で構成されています。
特に生産が盛んな都市は、以下の通りです。

なお、チェルニフツィとザカルパティア地方の多くの都市では、ウールと合成繊維から成るカーペットが生産されています。

リネン

そのほとんどがウクライナ産の原料を使って生産されるリネン。国内で生産される全テキスタイルの7.3%を占めています。

ウクライナはリネンの生産・加工のサイクルが充実しており、30棟以上の工場が稼動しています。

リネン生地は衣料品として使用されます。特に業務用製造の耐久性に定評があり、防水シート、消防用ホース、靴などの原材料として生産されています。

リネンの生産は、リヴネ、ジトミルに位置する工場で行われています。ウクライナはリネン繊維・織物の輸出国でもあります。

繊維産業の代表的企業

ウクライナ最大の縫製工場の一つに、テキスタイル・コンタクト・グループ（TC）が挙げられます。TCグループは、チェルニヒフ、コロステン、ルブニに縫製生産工場を持ち、戦時下にも関わらず今日も工場を稼動しています。

TCグループは1995年に設立され、今ではウクライナの軽工業産業で最大の貿易・生産規模を有するグループの一つです。

現在では、卸売・小売業、生地・アクセサリ・家庭用繊維製品の輸入、生地・糸の生産、アトリエサービス、ドライクリーニング、さらに衣類や作業着（軍服を含む）の縫製など、さまざまな事業分野を手掛ける持株会社です。

戦争中にも関わらず、衣料品生産量は昨年と同程度を維持、または増加傾向にあると、同社の広報担当者は述べています。

さらに、政府機関、省庁をはじめ、軍隊・国家国境警備局・テロ防衛・ウクライナ国家警備隊などの各部門からの注文があるようです。

同社の工場は海外顧客からの注文にも対応しています。2021年には、KateSpade、Wattana、De Fursac、Comma、2022年には、Isabel Marant、Faconnable、Lufthansaといった企業との取引がありました。

同社は、ウクライナ西部での衣料品生産を拡大する考えを捨てておらず、新規プロジェクト（繊維・衣料品）への投資家誘致に積極的に取り組んでいるようです。

中小企業の特徴

中小企業や家族経営の繊維メーカーは非常にユニークな取り組みを進めています。

これらの小規模企業は、職人技によって細部にまでこだわり、環境に優しい高品質なリネンウェアを提供することで、ウクライナの繊維産業に独自の価値をもたらしています。

中には、素材の品質と持続可能性を保つために、自社で栽培した亜麻を使用する企業もあります。

中でも人気が高いのは Linenkombinat Ivano-Frankivsk社 、Galeria of Linen社の2社です。 

Linenkombinat Ivano-Frankivsk社は、イバノ・フランキブスク市に拠点を置く小さな衣料品製造会社です。シャツ、ドレスなど、さまざまなリネン製品の製造を専門としています。

Galeria of Linen社は、最高品質のリネンを100％使用したデザイナーズウェア、ホームテキスタイル、ギフト用品、アクセサリーを製造・販売している企業です。

刺繍入りのドレス、ブラウス、コート、スカート、ジャケット、スカーフ、シャツなど、数多くのリネン製品を販売するほか、キッチンセット、テーブルクロス、エプロン、鍋敷き、タオル、バステキスタイルなどの製品や記念品も充実しています。