今月17日、ポーランド議会下院(Sejm)は、毛皮や宗教的儀式のための繁殖・畜殺の禁止を含む「動物保護法改正案」を賛成票多数(8割弱)にて採択した。採択された法案は、さらに議論を深めるため上院(Senat)に送られる。野党の「連帯」と「結束した権利」が反対票に投じる中、与党の「法と正義」が法案改正に意欲を示し、可決となった。
〇法案の内容
可決された法案は与党の「法と正義」によって草案されたもので、うさぎを除いた全ての動物の、毛皮を目的とした繁殖を禁止している。この禁止法案は、発行から12か月後に施行される。
また本法案はハラール肉、コーシャ肉の輸出を禁止するものでもあるため、損失を被る畜産農家は国家予算から補償を受け取ることとなる。これらに加え、サーカスを含む娯楽施設での動物の使用も禁じている。また、動物保護施設の厳格な管理、動物問題のための評議会の設立も予見される。
〇ポーランドの現状
動物愛護団体、Otwarte Klatki (Open Cages)によると、ポーランドには約550箇所の毛皮農場が存在しており、約550万頭の動物が飼育されている。
ポーランドは中国、デンマークに次ぐ世界第3位の毛皮生産国であり、ハラール肉とコーシャ肉のヨーロッパ最大の輸出国の1つでもある。農業省のデータによると、2017年は主にイスラエルとトルコへ70,000トン超を出荷した。イスラム教徒、ユダヤ教徒が食べるこれらの肉は、畜殺の前に喉を斬る行為が必要とされるため、動物愛護団体から非難の声が上がっていた。
〇予測される影響
本法案に関して、畜産農家を抱える地方から反対の声が上がっている。ポーランドの新聞「Gazeta Wyborcza」によると、経済的影響は約16億ユーロにものぼるという。与党の支持基盤である農村地域において、食肉加工に携わる労働者や住民の多くが影響を受けるとされ、連立与党の一部からも反対の声が上がっている。