ポーランドのエネルギー事情

石炭一辺倒から輸入への依存へ

ポーランドは、現在でも電源構成率の8割を石炭が占める「石炭大国」です。

2020年はCOVID-19のパンデミックによる産業活動停滞による影響で、主に工業・産業に使用されているヨーロッパ全体での石炭の消費量及び生産量が、減少しました。

一方、今日でも家庭用暖房などの日常生活のために石炭が使用されているポーランドでは
消費量の減少はヨーロッパ全体と比較して小幅で、
ロシアをはじめとする他国からの輸入が行われました。

上記のグラフからは輸入量のほとんどがロシアからのもので、
他の4か国との差が大きいことが分かります。

この輸入の背景には、ポーランドおよび欧州全土における石炭生産量の減少があります。
特に欧州連合加盟以来、エネルギーの多様化を進めてきたポーランドは
石炭の使用率・生産量を大幅に下げました。

EUROSTAT https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-eurostat-news/-/ddn-20210810-1

その分、石油や天然ガスなどの消費量が増加し、
全体のエネルギー輸入依存度が年々高まっていきました。

以下のグラフは石炭の使用率の変遷や、
石炭の代替となる資源の輸出入量の変遷をそれぞれ示しています。

https://www.iea.org/countries/poland
https://www.iea.org/countries/poland
https://www.iea.org/countries/poland

2040年までのエネルギー政策

欧州連合加盟以来、エネルギーの多様化を進めてきたポーランドは
石炭の使用率を下げた一方で、エネルギー輸入依存度が年々高まっていきました。

 ポーランド政府が2021年度に策定した「2040年までのエネルギー政策」では、
欧州連合の気候・エネルギー政策に対する実行策として、3つの柱と8つの具体的な目標が掲げられています。
3つの柱は、①移行、②排気量ゼロのエネルギーシステム、③大気汚染ゼロです。
この中では石炭発電からの移行や再生可能エネルギーの利用、
またその工場建設による地方の雇用創出、さらに洋上風力発電や原子力発電などが挙げられています。

 ウクライナ侵攻後は、この策提案の達成速度を早めるため、
早ければ2022年までにロシアのエネルギー資源から完全に独立するという内容に改定が行われました。

具体的施策:原子力発電所建設

この達成のために進められている一つのプロジェクトが、原子力発電工場の建設です。
2022年の10月末にアメリカの原子力発電会社のウェストハウス電力会社が、
バルト海に面したポメラニア地区に最初の電子力発電所が建設されることが決まりました。

その後、エネルギー会社のZE packとポーランドの大手電力会社PGE、さらに韓国水力原子力会社が、
ポーランド中心部ポントゥヌフ(Pątnów)地区での原子力発電所建設に合意しました。

これらの決定は欧州連合の手続に準拠する必要があり、準拠していなかった場合は異議申し立てを受ける可能性がありますが、
昨年12月には、ポーランド原子力工場とウェストハウス電力会社が支援や技術提供などの契約を結びました。

その一方で、ポーランドと国境を接するドイツの中の4都市は、ポーランドの原子力発電所建設に反対の姿勢を示しています。
ドイツはチェルノブイリや福島での原発事故を受け、脱原発に取り組んでおり、
再生可能可能エネルギーの利用に積極的です。

工場の建設は2026年から開始予定ですが、
ドイツ側からの反対もあり、今後の計画の進捗具合や関係国との調整をしていく必要があります。

編集後記

前回の記事で電力不足について、少し触れましたが、
今回の記事ではよりポーランドのエネルギー事情と政治との関わりついてご紹介しました。

実際にポーランドで生活していて、電力が著しく不足していると感じることは少ないですが、
学校や学生寮では節電が呼びかけられています。
また、クリスマスの電飾などには消費電力が少ないものを利用するなどの工夫が見られ、
国や市の呼びかけに対して協力している様子が伺えます。

安定的な電力需給に加え、環境に配慮した発電方法を模索しているポーランド政府ですが、
原子力発電がこの課題に対する効果的な一手になるのか、今後の動きが重要になっていきます。
さらに、原子力発電のネックとして挙げられた事故のリスクに関連して、
日本の例が挙げられたことについても、福島の原発事故が他国にとっても衝撃的なものであったと改めて認識しました。

【出典】

Statista

Poland: import of coal by country 2022 | Statista
In 2022, Poland imported 10.99 million metric tons of coal from abroad, of which 3.24 million metric tons were imported from South Africa.

JETRO

ロシア産エネルギーからの独立と脱炭素化に取り組む(ポーランド) | エネルギー安全保障の強化に挑む欧州 – 2022 – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

Energy policy of Poland until 2040 Ministry of Climate and Environment

https://www.gov.pl/attachment/7ba82820-4a14-4bb8-a84a-a0bb51c6d432

World Nuclear association 

Nuclear Power in Poland - World Nuclear Association
Poland plans to have nuclear power from about 2033 as part of a diverse energy portfolio, moving it away from heavy dependence on coal.

World nuclear news

Poland's government confirms Westinghouse for nuclear plant : New Nuclear - World Nuclear News
The Council of Ministers has formally approved the decision that the first nuclear power plant in Poland will use three Westinghouse AP1000 reactors - with the ...

Ministry for social Affairs, Health, Integration, and Consumer Protection of the State of Brundenbrug

Poland's government confirms Westinghouse for nuclear plant : New Nuclear - World Nuclear News
The Council of Ministers has formally approved the decision that the first nuclear power plant in Poland will use three Westinghouse AP1000 reactors - with the ...

Eurostat

Coal production and consumption decreased by a third in 2 years
The decreasing trend observed in coal statistics in the EU continued in 2020. It affected both hard coal and brown coal, and both the production and the consump...

IEA

Poland - Countries & Regions - IEA
Coal dominates the power sector of Poland, where it is the largest source of greenhouse gas emissions and a major employer. While the country has experienced st...

VOA

In Poland, Where Coal is King, Homeowners Queue for Days to Buy Fuel
People fearful of winter shortages wait for days to stock up
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